馬から学んだこと

2026/01/13

「午年」の今年、「2000年間で最大の発明は何か(ジョン・ブロックマン編)」という本の中に、「馬と馬の家畜化が文明の進化に大きな影響を与えた」との記述がある新聞記事を目にしました。世界の3大発明と言えば「火薬」「活版印刷」「羅針盤」を歴史の授業で学びましたが、その後の産業革命での「蒸気機関」、さらに近年の「コンピューター」「インターネット」など、文明の進歩に大きな影響を与えたモノは、何がトップなのかは、なかなか難しい問題だと思います。この本の中では、科学ジャーナリストである編者のジョン・ブロックマンが世界中の学者・哲学者・起業家など108人に問いかけ、集めた回答をまとめたのですが、「馬と馬の家畜化に関連する回答」が10人近くあったのです。

確かに人類史を俯瞰してみると、馬を移動手段として活用することになり、人間の行動範囲は劇的に拡張する「技術革新」となりました。人間の徒歩の社会から、数倍の距離を短時間で大量の物質とともに移動できるようになったのです。東西文明を結んだ「シルクロード」を通じて、「絹」や「香料」などの物質だけではなく、「科学技術」「宗教」「医療」「芸術」なども全て馬による移動能力があって初めて成立したのです。また、農耕馬として、機械のない時代の「トラクター」でもあり、農業生産を増大させました。一方で、戦争における場面では、それまでの徒歩戦から騎馬戦へと「軍事革命」を引き起こしました。日本における戦国時代や米国の西部劇を思い浮かべるとその力がよくわかります。

では、なぜこのようなことが可能だったのでしょうか? それは知れば知るほど驚異的な「馬の優れた能力」があればこそです。まずは身体能力。競走馬のサラブレットは、時速約60㎞で走ることができます。今でも自動車の能力を「何馬力」と表現するように「強い力」もあります。また、馬の聴力は約4km先の音も聞こえると言われています。加えて、馬の耳はクルクルとよく動きます。器用な耳で、聴力だけでなくどの方向から聞こえるかを察知できるのです。目は陸上哺乳類の中で最大級で、真後ろを除いた約350度の視界を確保できます。夜間でもよく見えるため、昼夜を問わず活動することができます。そして感情豊かで、仲間とのコミュニケーションを大切にします。鳴き声や体の動き、表情によって意思疎通を図ります。口角を上げて歯をむき出しにする「フレーメン反応」は、馬がリラックスしている時に見せる表情でまさに笑っているように見えます。

実は私は、20代後半から約30年間、馬との生活を送りました。単に馬の背中にまたがり馬が歩くたびに背中でポコポコと揺られていた「乗馬」から初めて、ある程度人馬一体で動けるようになった「馬術」を経て、最終的に乗馬クラブに初めてやってきた馬を「調教」する経験をしました。この経験を通じて、馬の持つ「優しさと強さ」、馬と協力する中で生まれる「信頼」を学びました。今、CASAを運営していて、馬と過ごした時間がとても役立っています。これらを大切にしながら、今年もCASAをみんなと一緒に運営していきます。

小沼 好宏

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